大阪・奈良の建築設計事務所|一級建築士事務所 基本フォルム。|grace of moon ランドスケープとしてのバーカウンター

 
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grace of moon (2001) ランドスケープとしてのバーカウンター
日本 商環境設計家協会(JCD)デザイン賞2001 〈新人賞受賞〉

この作品は、レストランに併設されているガーデンの屋外バーコーナー施設として計画しています。パーティーやブライダルイベントでのドリンクコーナーとしても使用しますが、夕刻からのガーデンバー単体での営業が主な用途です。大阪の中央区ですが、豊かな緑に囲まれるロケーションにあります。実は、このバーは2・3年の期間限定で設定されており、もともと短期間で撤去される事が決まっています。そのためローコストで作る必要もあり、製作も全て、私ども基本フォルムで行いました。

工作物概要・規模
所在地 大阪市中央区
名 称 GRACE OF MOON
用 途 野外バー
構 造 木造
主要仕上げ材 足場板、トタン、米松、2×4材
シャワーカーテン地
設計期間 2001年2月
施工時期 2001年3月〜4月
バースペース面積 16.7
ガーデン面積
(舗装部分)
134.6
工事費用 100万円


プレゼンテーションボード

どんな場合でもそうですが、空間に何かを新たに設置すると、元々の空間の性質は少なからず変化します。このガーデンはロケーションに恵まれていましたが、実は、やや雑多な印象を与えるのが難点でした。計画は求められた施設をただ設置するだけでなく、そこにあることでかえってこの庭を修正してしまえないか、それも必要最小限の大きさで、目立たずに、普段は庭の一部分としてたたずんでいるようなさりげなさで庭を整え、いざ使われる時には花が開くようにそれが人の行為とそのロケーションを結び付け、この庭のよさを拡大して引き出すことができないかと考えました。バー施設を作るというよりは作庭行為に近い考え方です。そのためにまず、ロケーションから形を注意深く導き出す手法をとることにしました。


具体的にはまず、全体を客席のあるメインカウンター、デリバリーの受け渡しに使うサイドカウンター、調理台等といったそれぞれ役割の違ういくつかのパーツに分解し、大きくなりすぎないようボリュームを分散させました。それを機能的な位置を考慮しながらもあまりせり出さないよう、ガーデンの土俵際をなぞるように折り曲げて配列しました。また天板も同様にエッジの角度を根拠に求めつつ必要な幅と奥行きを持ち合わせた不整形な形をとり、それを支える腰壁は折れ曲がりながら連続する格子状のもので構成しました。メインカウンターの高さは、客席側でガーデンチェア−を利用できるローカウンター形式となっておりますが、サービス側である程度の高さを必要とするため、客席側にステップをつけて解決し、全体としてはハイカウンターとしました。幸いこうすることで、カウンターを一体的に支えることのできる土台を組み込むことができるようになりました。このように高さでの機能性もしっかり成立させた上で、一方では周りの地形や植え込みに馴染むよう注意深く形態操作を行っています。


これらの手順の末、このカウンターは一見ガーデンに溶け込みながら、庭石のように眺める角度によって形が変わってゆく面白みを伴って、反対に普段意識することのないガーデンのエッジを浮かび上がらせたものとなりました。


カウンターの内部には電球が組み込んであり、開店時に点灯する仕組みになっています。カウンター席では気が付きにくいのですが、テーブル席の目線からは格子から漏れ出してくる穏やかな光がちょうど見えるようになっています。それと飾りおかれた酒類があわせてガーデンを包み込む雰囲気となり、全体を穏やかなバー空間として盛り立てるような仕掛けになっています。

また衣をまとうような感覚で設営ができる専用のテントもつくりました。雨の吹き込みに応じて開閉が出来、小雨程度ならば営業することができます。慣れると20分ほどで設営が可能ですが、余程の事がない限り雨天での営業はしないため、実際にはほとんど使われることはありませんでした。


材料について。土台は米松の乾燥材です。ステップはカンナがけした足場板を使用し防腐効果のあるものを塗布しています。カウンターの腰壁は2×4材を格子状に組んでいますが、結果89mmという懐の深いルーバーを形づくりました。天板の仕上げはボンデ鋼板を折り曲げ加工した上にクリアー塗装しています。打ち付け鋲と貼り合せ部分にはコーキング処理を施しています。下地は構造用合板によるパネルです。このように一般的に安価で手に入りやすい材料を工夫して使っています。
 
昨今はオープン形式を取り入れたカフェが多く開店されていますが、様式的なイメージが先行しているような気もしています。ここでの本当の魅力は露天ゆえの不確定要素というリスクを覚悟した上でしか得ることのできない、空気感なのではないでしょうか。もちろんこのバーは季節や天候によって環境が大きく左右されますが、その代わり、天気のいい暖かい夜には風を感じ、月や星を心ゆくまで眺めながらおいしくお酒をいただくという、ロケーションを十分生かした楽しみを味わうことができます。それはひとえに、定常的な収益を約束できないという事でもあり、レストランの拡張部分であるからこそ成立しています。いくつかの条件が整って初めてこのようなプログラムが成立できるといえます。言い換えれば一種のゆとりが生み出した現象といえるでしょう。事実、居合わせたもの同士がある種ゆとりの感覚を共有しています。日本的な表現を借りればこれを風情というのかもしれません。
この計画ではランドスケープの手法を念頭におきながら、場所のすべてを受け入れつつ、条件の一つ一つを小さな建築をつくるつもりで成立させました。目的にあった良質な空間づくりをある程度成功させることが出来たのはそのためではないかと思っています。




 
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