研修室
屋根スロープの形がそのまま吹き抜けの天井に生かされています。
この部屋は海とは反対側に置かれた独立した空間とすることで落ち着いて研修が行われることを意図しています。
自炊室が隣接していて、調理実習も研修プログラムに折り込むことができます。
床下は空気が流れるようになっていて、エアコンのリターンエアーのダクトを兼ねています。
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スカイコート
自然の移ろいに合わせて刻々と光の表情を変えていき、波の音が遠くに聞こえる荘厳な場所です。
電気設備はあえて排除し、照明はロウソクのみとしました。
人工的な設備に慣れきった現代人にとって、そういうものから解放されるための場所があってもいいのではないかと思い、いくつかのフォーマット(ご想像にお任せしますが)を参照しながらこのような部屋をつくりました。
他の空間が動的な位置づけがなされているのに対してここは静的な場所であり、また建物の一番奥に隠されたように置かれています。ここは静かな瞑想の空間です。
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屋根スロープ
ガラス越しに遠くの半島や水平線が見えます。
海というのはロケーションとして素晴らしい要素ですが、ずっと向かい合うのはそれはそれで辛いものがあります。そんな時、海側のブランドを下ろすといったん海は遮断され、中庭にのみ解放された場所になります。しかし、スロープによってどこか海とはつながりが保たれます。
司馬遼太郎の小説に「坂の上の雲」というのがありますが、何かそういう実際に登る以上にその頂の向こうに何が見えるのだろうという期待のようなまなざしを示したもののような機能とはいえない機能があるように思います。
スロープは微妙なムクリと反りが混在する均一ではない揺らいだ曲面をしています。
これは 砂浜や川床など水辺地形のメタファーでもあります。近くには遠浅の広川ビーチがあり、海水浴の後には砂浜に寝転がった印象や、波に揺られた印象が身体に残っているものですが、夜に星を眺めるようにここに寝転がれば一日を振り返りながらそれらが蘇ってくるのではないでしょうか。
地形や造形としては連続していませんが、一種の飛び地を建築に取り入れるという手法、身体に刻まれた記憶を通して時空を飛ばして自然環境とつなげるという方法をこの建物では行っています。
一方、屋根本来の機能である水の排水についても、雨天には薄い水の膜が流れる川のように、晴天時には水の無い川床のように、自然の営みが転写されたような形状を意識しています。集められた雨水は壁から突き出たガーゴイルで5メートル下の水受けに注ぎ込まれます。
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2階休憩室
海側に向けて大きな横長の開口があり、フルオープンにするとまさに海上に浮かんだ部屋のような臨場感があります。
中央より左側の中庭部分には薄く水をためることができます。その時は飛び地の渚が現れたかのようになり、まるで無限大の水平面を獲得したような錯覚を覚えます。
屋根の部分でも触れましたが、視覚、聴覚、身体記憶によって外部環境とつながりを持ち、時空を問わず少しずつ身体が溶け出していくような現象を建築によって造れたらなという思いがあります。その時はむしろ建築そのものは見えなくなるような、究極としてはそういうものができれば本望だと考えています。
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中庭夕景
夕暮から日没にかけてこの場所は大変ドラマチックな変化が生じます。
空が暗くなるに従い、自然の光と人工の光が屋根のスロープで不思議なグラデーションを描きます。
完全に暗くなると漆黒の空に吸い込まれていくような錯覚を覚えます。
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