大阪・奈良の建築設計事務所 基本フォルム。住宅設計監理。北側斜面地の家,

 
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鴬台の家 (2005年)

ローコストの北側斜面地住宅
 
北側斜面の造成地で、平らな部分が少なく、 写真手前の南側に向けて、敷地を横切る擁壁をかわすように2階と3階をキャンティレバーでせり出しています。

1階が玄関で寝室や浴室トイレがあり、2階がリビングとキッチン、バルコニーや予備室があります。
3階は予備室とルーフテラス。

基礎面積を減らしてコストを抑えながらも上に行くほど面積が増えるようになっています。
写真奥の隣に立つ一般的な住宅では木造のため、開口面積が小さくどうしても日中の日陰時間が多くなってしまいます。一方北側ではプライバシーを気にすることなく視界を大きく取ることができ、ルーフテラスも同様に開放感があります。

単純なボリュームの組み合わせですが、ここでは水平上下と変化のある空間が展開しています。
その場所に沿って建物を考えることは大切です。なぜなら、そこにある資産は土地面積だけではなく光や高低差、眺望の向きなど様々にありえるからです。それを生かしながら建物をつくると同じ場所でも全く違った魅力を享受することができます。屋上から周囲の建物を眺めると、皆なぜこうしないのかなと逆に不思議な気持ちになります。

概要 専用住居
場所 兵庫県川西市
設計期間 2003年9月〜2004年3月
施工期間 2004年8月〜2005年3月
構造・規模 鉄骨3階建
敷地面積 132.34u(40.0坪)
建築面積 50.49u(15.2坪)
述べ床面積 102.55u(31.0坪)
坪単価 施工床面積36.6坪 50万円/坪
   

コストについて
坪単価は50万円です。重量鉄骨の住宅としてはかなり安いと思います。これには外構工事や駐車場のシャッター、照明器具なども含みます。
工夫としては、付帯工事の少ない敷地を選んだこと。無駄な素材を吟味しながらそぎ落としたこと。建物を出来るだけ単純な形で構成すること。間仕切を出来るだけつくり込まないことなどです。塗装工事を施主施工するなどのチャレンジも行いましたが、素人工事では工程に追い付かず結局職人さんに追加を払って出来なかった分をやってもらいました。それも含みます。

あとは、工務店さんには一肌脱いでもらっています、そこは奇跡でしょう。ただ、クライアントさんにはコストを下げるときに不要な物の選択についてシビアに対応してくれ、その思いも工務店さんには伝わっています。こんな面白い建物はぜひうちでやらせてほしいという思いもどこかにあったかもしれません。そこはクライアント+施工者+設計者というチームの力が結果としては反映されます。それが発揮されないプロジェクトでは実現不可能だったかもしれません。コストダウン巾はゆうに500万ほどになります。
確認申請料、登記費用、 分担金、設計料などは別途となります。



 

ピロティ
キャンティレバーの下はピロティになっており、玄関のアプローチとなっています。
擁壁は土木構築物ですが、その存在感は意外と落ち着きます。擁壁と建物の間に通路を残し、そこを抜けて玄関にたどりつきます。

写真上にバルコニーの板が見えますが、その隙間から時間によっては日光が射し込みます。バルコニーの屋根は透明の素材ですので、このピロティはむしろ明るい場所です。

ハイサイドライトやスリットを駆使して、1階にも直射光が届くようになっています。

この場所は遊び場にもなりますし、なにかと使い道があります。



 

玄関から見た1階室内。

広くワンルームとして使え、引き戸を
閉めると独立した部屋として使えます。

外観の金属質の表情とは変わって、落ち着いた内部空間です。

黒い床は合板に塗装したものを使っています。
安価ですが、素材として不都合はありません。
階段も途中までは同じ合板でつくられています。
いわば木の箱なのでその下は収納にしています。

靴脱ぎの土間は比較的広く取ったので自転車なども置いておけます。

奥に見えるブロック壁は寝室と水廻りを仕切る間仕切壁で、左のドアの奥が洗面・浴室です。
ブロックでつくった理由は、遮音性や防水下地としての他、質感のバランスを整え、ブロックという記号的要素を室内で表現することで外部を慣入させる意図があります。ブロック=外部と言うものではありませんが、「ブロック塀」にまつわるクライアントとの共通体験により成立しています。

右端に見える丸柱は建物の中心にあって1階から3階を貫いており、大黒柱のメタファーとしています。



   


2階LDK

1階と打って変って明るい空間が広がります。
奥に見えるのは南面のバルコニーで、リビング空間と一体的に使えば2階フロア全体を半屋外的で開放的なスペースとなります。奥の突き当りはエキスパントメタルの引き戸が取り付けられ、開放させれば南側の斜面に降りることができます。

重量鉄骨の骨組みを露出させています。特に、真中の大黒柱から向こうは内装も最小限ですので外壁パネルが露出しています。工場やビルで使う断熱材のサンドイッチパネルで、内外とも仕上げは鉄板です。使用する場合は好みの分かれるところですが、その部分は低い階高に押さえていることと、適度に木材が使われていることから、思ったよりも親しみのある優しい空間に仕上がっています。素材そのものよりも、どういう空間にしようかという思いが大切です。
構造が見えるということも無骨のようですが、安心感があり、逆に 物を引っ掛けたり出来るところがむしろ便利です。




 

前の写真の反対側から

ご覧のとおり、鉄骨むき出し、鉄板むき出し、床は合板です。

でも階段の踊り場がヒノキの格子だったり、天井やバルコニーが木の板だったり、高さの押さえられた天井から素朴な電球照明がぶら下がっていたりと武骨さとは裏腹にここは人のためのスペースになっています。なによりもサッシを開け放てば右のバルコニーと一体になった半屋外の広いスペースが確保でき、写真の奥に見える横長窓からは巡光で遠くの山並みが一望できとても気持ちがいいです。キッチンはその窓の横にあります。

キッチン(夕方というより、諸般の事情で早朝の撮影)



 

階段室を見下ろしたところ。

階段の踏み板は下に光をとどかすため鉄板に穴を空けています。
この写真では下が暗く見えますが、撮影した時間帯と露出が悪いためで、実際にはもっと明るいです。

夜は1階のホールのライトを灯すと光が水玉模様を上階の天井に浮かびあがります。




 

ルーフテラス

工事中の写真ですが、ここは完全にプライバシーtの独占できる屋外空間です。大変景色が良く、夏はプールで遊んだり、普段は物干しとして活用されています。

こんなに景色がいいのに、屋上を作っているのは付近ではこの家だけです。それが不思議でなりません。





 

透視パース

設備機能は1・2階に集中させてあるのがお分かりかと思います。
リビングのある2階から3階、ルーフテラスにかけては浮遊感のあるフロア配置となっています。
ルーフテラスと3階床に微妙な高低差があるのは、その隙間から光が入るためと、上下でお互いに気配が伝わるようにする狙いから設定されています。

 

さらに設計のいきさつや、設計の背後にある意図を記した手記があります。ご覧になる方はこちらへ。

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