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住宅と工房のある住宅です。
工房では社寺仏閣の建物や彫刻に描く文様や襖絵などの作業をされています。
風致地区というのはどういうことかと言いますと、歴史的な景観を守るため、建築基準法とは別に条例で建物の形や様式が決められているということです。基本的には和風建築がベースで、屋根の形や葺き材の色が決めらており、平面も直角で構成することが義務付けられています。壁の色、サッシの色や形、植栽の本数や緑地の面積その他多岐に渡り決まりごとがあります。
細かいところは条例を参考にしていただくとして、とにかく、敷地が整った形で、ある程度の広さが無いとすぐに規制ラインに引っかかってしまう、デザインも自由に出来ないという、なかなか設計者泣かせな敷地条件なのです。
もちろん京都の景観はとても愛していますし、規制が無くても無秩序な建築はいけませんのでこの条例についてとやかく言うつもりはありませんが、行政窓口の担当者のさじ加減次第で図面を突き返されては直して持っていくというやり取りには閉口しました。着工期日も迫っていたのでかなり冷や汗ものでした。
それでも南の庭を中心に駐車場、工房、居住スペースと必要な部屋をすべて配置し、残った敷地を有効活用したうえで遊びのスペースも加え、周囲の緑や歴史的風景を楽しめる現代の住宅、というものにまとまっています。
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概要 |
住居と工房 |
場所 |
京都市右京区 |
設計期間 |
2007年4月〜2007年9月 |
施工期間 |
2007年10月〜2008年6月 |
構造・規模 |
木造2階建 |
敷地面積 |
259(78坪) |
建築面積 |
75.05(22.7坪) |
述べ床面積 |
144.07(43.58坪) |
坪単価 |
施工床面積47.3坪 70万円/坪 |
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正面全景
正面の間口は駐車場と壁面後退に対応するため、わずか一間 、奥に行くにつれて雁行し、広がっていきます。2階の正方形の窓からは仁和寺の五重塔が望めます。ここへは屋内の道行きを経て到達できます。
1階の板壁にはスリットを開けて中にLEDを仕込み、右側の玄関へ進む路地空間を蝋燭のようなほのかな灯りで演出しています。駐車場は左。
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住居側玄関
踏み石を進んだ奥に玄関があります。写真手前は自転車置き場。
内部空間
1階居間。
スキップフロアや吹き抜けを随所にあしらいつつ、屋外のデッキや回廊にアクセスしやすい作りになっています。正面奥は2畳の小和室。限られた中にも和室があるといいなという話の中から、茶室のような小さな部屋が生まれました。低い窓からは隣地の雑木林が伺えます。
キッチンはクライアントとの打合せを経てアイランド・対面形式の両方の良さを追求した結果、独自の配置となっています。
床下や、エアコン隠し、キッチンの周辺に収納が造り込まれています。
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居間から中庭を見たところ
中庭越しに工房の明かりが見えます。
この屋外デッキはバーベキューや朝の体操にも使え、大変重宝されているとのこと。
真中のテーブルは脚の長さが調節でき、いす式でも座敷でも使用可能なように特注しました。キッチントップと巾をそろえているので、キッチンと直線につなげても違和感なく使えます。
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工房について
下の二枚は工房です。
社寺仏閣の彩色作業をする作業場となっています。
中央の机は床に沈めてツライチにすることもでき、奥の白い壁は開けても閉じても使うことのできる可動間仕切りです。
開けると工房用の玄関土間。閉めると独立した展示ギャラリーになります。
格天井にはゆくゆくは極彩色で文様が描かれます。
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工房から中庭を見る。
座って丁度いい高さで鴨居が低く設定されています。そこは先ほどの和室と理屈は同じです。外のデッキとひとつながりで使えるように、また彩色を終えた資材を搬出するために間口を大きく取り、戸を引き込めるようにしました。向かいの石垣は隣地の所有ですが、借景に使わせてもらっています。
階段室。
踊り場を広く取り、一つのコーナーとしても使えるようにしています。この家の空間の要として機能していて、居住エリアと作業エリアを結び、子供室へ向かうブリッジやサニタリー前の吹き抜けなど空間どうしをつなぎます、窓からはアプローチが見降ろせます。この空間を見ると祖父母家族が長く暮らしていた今は無き京町家や祖父の働いていた木造の陶器工場の空気感を思い出します。
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2階子供室。
北側斜線をすり抜けるように一段屋根を低くつくることで、あえて奥まった小部屋のように空間に変化を与えています。
左側の壁にはロフトに上がれるクライミングウォール。こちらはクライアントと一緒につくりました。
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中庭夕景。
南側隣地の石垣と建物に囲まれたスペースで、道路側にもベンチを兼ねた柵を設け、プライバシーの保たれた中庭状の場所をつくりだしています。
庭に向かって各部屋の開口部を取ることで賑わいと一体感が生まれています。
写真の手前にあるのは樋から雨水を引いた水場です。ひと雨降ればすぐにいっぱいになります。雨水も捨てたものではありません。
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